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 事業紹介

土壌汚染に対する取組み
1.地球化学的解析手法によるアプローチ
地球化学の分野において岩石、鉱物の化学組成を分析走査電子顕微鏡(SEM)、蛍光X線分析装置(EDX)などにより測定し得られたデータから、例えば岩石の形成過程の推定など様々な事象を科学的に考察します。そこで当社では地球化学的解析手法による土壌汚染原因解析の検討を行っています。例えば下記に示す通り、鉛を大量に扱うバッテリー工場跡地及びカドミウムを扱うメッキ工場跡地の汚染土壌を分析走査電子顕微鏡で観察するとバッテリー工場跡地の汚染土壌からは純度の高い鉛粒子、メッキ工場跡地の汚染土壌からはカドミウム硫化物の粒子が検出されました。
<事例1>
バッテリー工場跡地土壌中の鉛含有粒子
<事例2>
メッキ工場跡地土壌中のカドミウム含有粒子
[左:SEM画像(反射電子線像)、右:SEM付属のEDXによる元素スペクトル]
上記の通り、現在SEMを用いて汚染土壌中に含まれる重金属粒子を検出・分析することにより、汚染原因が把握できる可能性を見出した段階にあります。そこで、次の段階として主にSEMを用いた解析により下記の課題解決に取り組んでいます。
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2.自然由来の土壌汚染
一般的に、土壌汚染は汚染原因から大きく人為由来と自然由来の2つに大別されます。
人為由来
工場など明らかに有害物質を扱った経歴のある土地で検出される汚染であり、扱われた有害物質が土壌に付加されることにより発生する汚染である。
自然由来
自然由来汚染は主に重金属による汚染です。これは元来その土地の土壌中に存在する重金属を含んだ天然鉱物が原因物質です。汚染原因として、主に下記の2つのケースが挙げられます。
 
<ケース1> <ケース2>

露出している金属鉱床、若しくは鉱山で掘り出
された低品位鉱石の堆積場(ズリ)が風化作用
を受け、環境中に放出された重金属鉱物。

沖積平野を構成する地層の中で主に
海成粘土層に含まれるヒ素含有鉱物。

河川源流部に存在するズリ山(兵庫県多田鉱山) 大阪層群の海成粘土層に含まれるヒ素含有黄鉄鉱
(フランボイダル黄鉄鉱)
上記河川の底質中に存在する鉛鉱石
(閃亜鉛鉱に伴って存在する方鉛鉱:円内部)
ヒ素含有黄鉄鉱のEDXスペクトル
このように自然由来の重金属鉱物による汚染の場合、汚染原因となる鉱物が特定されている場合があります。従って土壌中に汚染原因物質となる鉱物の存在を確認できれば自然由来の土壌汚染と判定できます。そこで当社では自然由来汚染判定の基礎データ集積として下記テーマに取り組んでいます。
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3.都市部に見られる原因不明な鉛汚染(人為バックグラウンドとして存在する鉛)
平成14年の土壌汚染対策法施行移以降、土壌汚染調査の実例が増えていくに従い、東京都内において汚染源が存在した経歴のない土地で基準値以上の鉛が検出されるという特異な鉛汚染の存在が知られるようになりました。この汚染は東京都市街地の広い範囲で検出されており、広範囲に存在すると推定されます。この点においては自然由来重金属汚染の特徴を示しますが、その鉛濃度は自然由来では考えられないほど高い値を示す場合がほとんどです。

このように人為由来と自然由来両方の汚染の特徴を併せもつこの鉛汚染ですが、その実態はほとんど把握されておらず、汚染原因も解明されておりません。前述の特徴から関東大震災若しくは東京大空襲による土壌への鉛付加の可能性が指摘されていますが、これも推測の域を出ない状況です。

仮にこの鉛汚染が関東大震災若しくは東京大空襲による土壌への鉛付加が原因であるとすれば、現在当該汚染について不適切な対応が取られていると考えられます。

汚染原因が関東大震災若しくは東京大空襲であれば・・・
(1) 存在範囲が自然由来の土壌と同じで広範囲にわたり、また汚染発生から70〜100年経過しているにも関わらず、東京都内で広範囲にわたる鉛による健康障害は発生していない。即ち健康に対するリスクはきわめて小さい汚染であることが実証されており、安全であるとの確証をもって住民とのリスクコミュニケーションをとることが可能となる。

(2) 自然由来の土壌汚染と同様に元来土壌が持っている普遍的な特徴と同様にとらえることができ、土地資産評価において大きな減損理由にならないと考えられる。

 

そこで当社では前述の鉛汚染に対して、自然由来の土壌汚染と同様に、地球科学的アプローチで実態解明及び汚染源解明を目的とし、下記テーマに取り組んでいます。
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4.これまでの取り組み
(1)大学との共同研究等
 

 

・平成15年4月〜平成19年3月
神戸大学自然科学研究科博士後期課程に社会人院生として研究員派遣。
     研究テーマ:自然界における砒素の存在状態及び濃集機構の解明
        (電子顕微鏡を用いた土壌中に存在する自然由来重金属粒子の観察) 
 

 

・平成20年4月〜平成21年3月
神戸大学人間発達環境学研究科との共同研究にて下記テーマについて研究を行う。
     研究テーマ:「電子顕微鏡を用いた重金属汚染土壌中の重金属存在状態解析及び汚染起源推定への応用」
 

 

・平成21年11月〜平成22年9月
京都大学エネルギー理工学研究所「エネルギー機器材料の創製と保全研究のための産業利用支援(ADMIRE計画)」に下記テーマでトライアルユース(無償使用)による機器使用申請を行い採択研究を行う。
     研究テーマ:「電子顕微鏡を用いた土壌中に存在する重金属粒子の実態及び濃集機構の解明」
 

 

・平成23年12月〜平成24年1月
同上計画にて有償利用にて機器使用し、下記テーマについて研究を行う。
     研究テーマ:「鉛汚染土壌中に含まれる鉛粒子の化学組成・形態における特徴の把握及び汚染原因の解明」
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(2)学会発表
 

 

・2003年12月 
第13回 環境地質学シンポジウム (神戸市・神戸大学)
  講演題目「大阪府北部地域の河川底質の砒素含有量と河川周辺に存在する鉱山との関係」
 

 

・2008年1月
第17回 環境地質学シンポジウム (東京都・日本大学)
  講演題目「電子顕微鏡を用いた重金属汚染土壌解析」
 

 

・2008年11月
第18回 環境地質学シンポジウム (名古屋市・名古屋大学)
  講演題目「鉱山及び温泉近傍の河川底質に含まれる重金属粒子の特徴−自然由来重金属判別の基礎データ−」
 

 

・2009年3月
第43回 日本水環境学会年会 (山口市・山口大学)
  講演題目「鉱山及び温泉近傍の河川底質に含まれる重金属の特徴」 >> 詳細はこちら
 

 

・2009年6月
第15回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 (名古屋市・名古屋国際会議場)
  講演題目「電子顕微鏡で見る汚染土壌中の重金属粒子」 >> 詳細はこちら
 

 

・2009年12月 
第19回 環境地質学シンポジウム (東京都・早稲田大学)
  講演題目a)「エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いた鉛汚染サイト土壌の分類」
  講演題目b)「汚染土壌及び自然土壌中に含まれる重金属粒子の化学的・形態的特徴」
 

 

・2010年3月
第44回 日本水環境学会年会 (福岡市・福岡大学)
  講演題目「電子顕微鏡で見る人為汚染土壌及び自然土壌に含まれる重金属粒子」
 

 

・2010年6月
第16回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 (仙台市・仙台市民会館)
  講演題目「電子顕微鏡・蛍光X線分析装置を用いた鉛汚染源の解明」
 

 

・2010年12月
第20回 環境地質学シンポジウム (東京都・早稲田大学)
  「バックグラウンド的に存在する人為由来の鉛粒子」
 

 

・2011年6月
第17回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 (川崎市・川崎市立労働会館)
  講演題目「電子顕微鏡で見る汚染土壌中の重金属粒子」
 

 

・2012年1月
第21回 環境地質学シンポジウム (東京都・早稲田大学)
  「汚染源が不明な鉛汚染土壌中に共通して存在する鉛粒子」
 

 

・2012年6月
第18回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 (さいたま市・埼玉会館)
  講演題目「電子顕微鏡で見る汚染土壌中の重金属粒子」
 

 

・2012年12月
第22回 環境地質学シンポジウム (つくば市・産業技術総合研究所)
  「汚染源が不明な鉛汚染土壌の地球科学的特徴」
 

 

・2013年3月
水環境学会年会 (大阪市・大阪工業大学)
  「東京都内で見られる鉛汚染土壌の地球化学的特徴」 >> 詳細はこちら
 

 

・2013年6月
第19回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 (京都市・京都大学)
  「河川底質中における自然由来鉛及び砒素の化学的特徴」 >> 詳細はこちら
 

 

・2013年11月
第23回 環境地質学会シンポジウム (つくば市・産業技術総合研究所)
  ヒ素含有鉱泉湧出口に形成されたトラバーチン内でのヒ素濃集の特徴 
 

 

・2014年6月
第20回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 (和歌山市・和歌山県民文化会館)
  ヒ素含有鉱泉湧出口に形成される鉱物集合体(トラバーチン)中のヒ素分析の特徴 >> 詳細はこちら
 

 

・2014年11月
第24回 環境地質学会シンポジウム (東京都・日本大学 文理学部)
  東京大空襲によるPbの土壌への付加に関する検討 
 

 

・2015年6月
第21回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 (福岡市・九州大学 伊都キャンパス)
  東京大空襲による土壌への鉛付加可能性の検討 >> 詳細はこちら
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(3)投稿論文
   
    ・兵庫県東部猪名川水系塩川底質に含まれるヒ素含有鉄化合物粒子の特徴,神戸大学発達科学部紀要,
 vol.11,115-120p,2006. (査読あり)

・兵庫県東部川西市平野鉱泉のトラバーチンにおけるヒ素濃集の特徴について,社会地質学誌,
 vol.3,1-9p,2007. (査読あり)

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